東京マラソン2024出走記④「神」の御姿を2度見ることができた話
私が出走した2度の東京マラソン(2021、2024)は両方とも、偶然にもエリウド・キプチョゲが参戦したレースでもありました。
マラソン界のGOATであり、私にとっては「生ける神」あるいはヒーローのような存在。
前回の2021ではレース中にすれ違う数秒しか見ることが出来ませんでしたが(しかも横からのみ…)、今回は2度見ることができました。
超貴重な機会
私が今回の東京マラソンを走ることになった時点では、招待選手の情報はまったくありませんでした。
まさかキプチョゲが再度東京マラソンに参戦するとは思ってもいませんでした。
以前に、キプチョゲがWMM(ワールドマラソンメジャーズ)6大会の完全制覇を目標に掲げているとネットで見たので、「この時期はボストンのリベンジで間違いないだろう」と思っていました(ボストンマラソンは4月にある予定)。
それが去年の12月下旬にキプチョゲ参戦が発表されて興奮したのは言うまでもありません。
自分が走る2度目の東京マラソンで、キプチョゲも2度目の参戦。
偶然だけど運がいい。
「今回はキプチョゲの姿を絶対目に焼き付けるぞ!たとえ自分のタイムをロスしても!」
と心に誓っていました(笑)。
1度目は偶然だった
今回最初にキプチョゲを生で見ることができたのは、偶然の出来事でした。
スタート1時間ほど前にほとんどの準備を終えてトイレの行列に並んでいた時のことでした。
私が並んでいたトイレが、偶然にもエリートランナーのウォームアップエリアのすぐそばでした。
すでにウォームアップを始めているランナーを見かけたので、
「おお、エリートランナーはここで軽くアップするんだな。自分もトイレ終えたらアップしないと」
なんて思いながら見ていたのですが、しばらくすると赤い軍団が。
NN Running Teamのお揃いの赤ジャージ(ウィンドブレーカー)を着たキプチョゲとその軍団でした!
5~6人で隊列を組むように軽やかな走りをしていて、キプチョゲはその中心。
キプチョゲを囲むような形で他の選手がポジションをとって、一定のペースで走っていました。
そういえばレースでも同じ感じです。
レースでは、ペーサー2~3人のすぐ後ろ(先頭集団の前方中心)にキプチョゲは常に陣取って途中まで走ります。
これが「キプチョゲ・フォーメーション」なのでしょう。
全員表情を変えずペースも変えず、淡々と走ってカラダを温めていました。
アップしているキプチョゲ(とその軍団)を見て、10秒ほど自分がトイレに並んでいたことを忘れちゃいました(笑)。
軍団でアップしているところを見ていても、キプチョゲのオーラというか存在感は大きかったです。
私自身がキプチョゲを神格化しているだけに、後光が射しているかのように見えました。
キプチョゲをしっかり見られた喜びで、スタート1分前まで自分の走りの心配をせずにいられました。
結果的に良かったのか悪かったのか分からないですが(苦笑)。
2度目は偶然ではなかったが…
2度目は偶然のことではありませんでした。
東京マラソンはコースに折り返し地点が複数あるので、自分の走る速さにもよりますが、先頭集団とすれ違う機会が1度はあります。
前回の2021でも1度すれ違うことがあったので、今回も同じような場所ですれ違うだろうと想定していました。
ある程度の距離を走り、先頭集団とすれ違うだろう場所に近づくと、前方の対向車線から先導者のポルシェが。
「おっ!キプチョゲが来るぞ!しっかり見るぞ!」
とペースを少し落として目を対向車側に向けたのですが、先頭はティモシー・キプラガトが走っていて、数メートル背後でベンソン・キプルトが追いかけていました。2人とも表情が険しめで、ペースを上げているのが分かりました。
「あれ?キプチョゲは???」
この時は、キプチョゲがまさかハーフ手前で先頭集団からこぼれていたとは思ってもいませんでした(自分も全力で走っていたから分かるわけない)。途中リタイアでもしたのかと思いました。
で、先頭2人とすれ違った後しばらく走っていると、あのオーラを放つキプチョゲを見つけました。
すでに単独走になっていて、先頭2人に比べてペースが遅く見えました。
「ああ、今日は調子が悪かったのか……もしかしたら、どこかでリタイアするかもなぁ…」
ちょっと残念に思ったのですが、私が見た時のキプチョゲは淡々と走りつづけていました。
見ることができてよかったですが、欲を言えば2021の時のような力強い走りが見たかったです。
王者の矜持なのかもしれない
キプチョゲの姿を見た後、私は必死に走りながら
「キプチョゲ、たぶんリタイアしているだろうな」
と思っていました。
30kmの前で逆転が厳しいレベルの差が開いていたし、なんというか勢いは感じられなかったので。
でも、それも仕方ないと思っていました。
39歳だし、次のレースに向けたコンディショニングを考えれば、今勝てないレースで無理する必要はありません。
すぐに「次!」と切り替えてもおかしくないし、問題もないはず。
私がフィニッシュした後にネットニュースで東京マラソンの結果を見ると、キプチョゲが10位でフィニッシュしていました(タイムは2:06:50)。
順位を落とし、しょっぱいタイムになっても、リタイアせずに最後まで走っていたことに驚きでした。
同時に「スゲーな」と。
考えてみれば、キプチョゲは途中リタイアしたレースがほとんどなかったかも。
雨で最後まで調子が上がらなかったロンドンマラソンでもボストンマラソンでも、優勝の可能性が消えても最後まで走っていました。
「どんな結果であってもフィニッシュすること」がキプチョゲのプライドというか矜持なのかもなぁと思いました。
しかも、レース後のコメントがしびれました。
「100%の準備をしてきましたが、いい日もあれば悪い日もあります。それがスポーツです。今日は私にとって悪い日でしたけど、毎日がクリスマスじゃないのですから仕方ありません」
「今日は悪い日でも明日はいい日かもしれません。今日の教訓を明日への糧とするまでです」
私より10歳若いのに、20歳ぐらい年上のように感じるコメントです(苦笑)。
ますます尊敬します。
自分の結果もキプチョゲの結果も満足いくものではなかったですが、キプチョゲを見ることができて、しかも素晴らしいコメントを聞くことができたのはとてもよかったです。
書いた人
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スポーツを見るのも好きなトレーニングジャンキー。サブ3.5を目指す(あと2分ちょっと…)自称中級市民ランナー。
見る方では、海外サッカー、マラソン、トライアスロン、格闘技全般、NBA、ラグビーが主な守備範囲。テニスもMLBも陸上競技も好き。
公認会計士 税理士
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