最初が肝心。だから最初は慎重だし時間もかかる

会計士,学び

「最初が肝心」という言葉は、いろいろな時に使われます。

全般的に、初めて人と会う時は第一印象が大事だとよく言われます。

新社会人なら、最初の仕事ぶりで周囲の先輩からのイメージが出来上がるかもしれないし、
後輩を持つ先輩は、最初の立ち振る舞い次第で後輩に舐められるかもしれない(苦笑)。

転校生は、最初の印象次第ですぐに友達ができるかもしれないし、人気者になるかもしれないし、以下略…

 

試合前のにらみ合いも負けられない(笑)

 

私もこれまでの40年ちょっとの人生のいろんな場面でそれは感じています。

幼少時は、2つの幼稚園と3つの小学校に行き、何度も自分が「転校生」になったことから感じたし、社会人になっても事あるごとに実感します(特に人間関係で多いかな)。

 

仕事で強く感じたのは、監査法人時代。
10数年前、とあるクライアントの法定監査を新たに受嘱することになり、その現場責任者(インチャージ)を自分がやることになった時のこと。

初めて見る財務諸表とはいえ、金額的に大きな数字や取引はしっかり押さえて上司に報告したところ、

「この取引はどういうスキームなんだ?」
「この数字はどういう取引から発生してるんだ?相手先は?」
「なんでそんな取引してるんだ?」

等々、金額的にちっちゃなところまで速射砲のようなフィードバックが……
上司一人が相手なのに、10人ぐらいから質問攻めに遭っている感じ(笑)。

明確に答えられないものがいくつもあり、「すぐに確認しなさい」と。

 

最初は「なんでそんな細かいことまで調べさせるんだよ~」と思ったものの、その監査業務が一段落したところでその上司が

「いいか。最初が肝心だぞ。最初の監査で「まあいっか」ってパスした(通した)ことは、会計基準が変わらない限りずっとパスし続けないといけなくなるぞ。後から「前任の○○がそう言ったかもしれないですけど、正しくはこうです」のようなことは、そう簡単には通じないぞ。クライアントにとっては、前任者の見解も我々の見解も将来の担当者の見解も全て「法人の見解」なんだぞ」

ということを話してくれました。

インチャージとしてまだ若手だった自分には、めちゃめちゃ刺さる言葉でした。
(「それを初めに言ってくれよ~」ともちょっとだけ思いましたが(^^))

目の前の業務・役割を時間内に淡々とこなすことしか考えていなかったのが、これを機に視野を広げられるようになったし、業務への慎重さ・緊張感のレベルが高まった感じ。
「いや、待てよ…」と思うことが多くなり、より監査人らしくなりました(笑)。

 

今、決算発表を再々延期するかしないかとかで問題となっている某社のニュースを見ていて、

「そりゃあ慎重になるわなぁ…」

と、上記のようなことを思い出しました。

今回の決算から監査をする監査法人が変わったので、今の監査法人にとっては初めての監査。
会社はついこないだ巨額の粉飾決算をやっているので、第一印象最悪だし信頼し難い。
慎重にならずにいられる理由は皆無でしょう。

報道によると、会社・監査法人間に見解が相違しているところがあるそうですが、それの有無にかかわらず監査法人としては慎重にならざるをえないし、時間をかけて細かくしっかり見ておきたいだろうと思います。

現場の実情は知る由もないけれど、第3四半期決算が年度末(=第4四半期)を過ぎても発表できないというのは異常も異常。
こんな状況はそう滅多にないと思うので、今後の行方も気になるところです。