「コンプリート」に限りなく近いボクサーは日本にいた

ボクシング

「コンプリート」という言葉がけっこう好きです。
意味合いとしては「パーフェクト」に近いでしょう。
(「コンクリート」ではないので注意)

MMAなら、かつてジョルジュ・サンピエールが「コンプリートファイター」と言われていました。
サッカーで言うなら、フィリップ・コクーのようなGK以外の全ポジションを高いレベルでこなせる選手でしょうか。
野球なら「5ツールプレーヤー」と言われますね(ヒッティング、パワー、スピード、守備力、肩の強さの5つで)。今ならマイク・トラウトでしょう。

 

ボクシングだと、一昔前のリカルド・ロペスが「コンプリート」に近いボクサーだと思っていました。
「Finito」と呼ばれていたし。

でも、昨日の井上尚弥選手(vs エマヌエル・ロドリゲス)の試合を見て、

「コンプリートボクサーが日本にいるんじゃん!」

と思いました。

 

 

無敗王者が弱く見えるとは…

井上選手もロドリゲスも、共に世界チャンピオンで無敗。ダウンもしたことがありません。

それだけに、

「さすがに今回は短期決着はないだろう。KOで終わるとしても試合後半だろうな」

と予想していました。

体重とともにパンチの威力が重くなる中量級以上の試合なら、早い決着もありえます。
でも、昨日の試合はバンタム級。軽い階級であり、カウンターが見事にヒットしない限り、KOするのは容易ではありません。
実力差がはっきりあるカードならKO決着を期待するけれど、無敗王者同士の試合で早期KO決着はないだろうと思っていました。

 

それがそれが。

早朝に生中継を見て、眠気が一気に覚めました(笑)。
最初のダウンは完璧に捕らえていたし、2度目のボディも強烈。3度目のダウンを奪う追撃も抜かりない。

終わってみれば完勝でした。
1ラウンド目はロドリゲスの方が攻勢に出ていたし、井上選手のフックが空を切る場面もあり、「やっぱりロドリゲス強いぞ!」と思ったのですが、2ラウンド目は弱く見えました…

いや、ロドリゲスが弱かったのではなく、井上選手が強すぎたということでしょう。

軽量級のタイトルマッチ、しかも無敗王者同士の対戦でこんなに早く勝敗が決まることは、なかなかないはず。
なのに、井上選手はそれを3試合続けてやってのけているわけで、ただただ驚きです。

 

相手を見切るのが早いのは研究を徹底的にしているから?

井上選手の試合を見ていて「すごいなぁ」と感じるところはたくさんあります。

パンチを出すタイミングの良さ、ハンドスピード、ディフェンスの上手さ、ステップワークの速さ、足腰(体幹)の強さ、全身の力を拳に乗せる上手さ(=パンチの強さ)、スタミナ、冷静さ、動体視力……

挙げたらキリがないですが(苦笑)、中でも私が特にすごいなと感じるのは、「相手を見切る早さ」です。
ジェイミー・マクドネル戦もフアン・カルロス・パヤノ戦も、試合開始のゴングが鳴って最初の1分で相手を見切ったのでは。
それで「これなら行ける」と判断して、仕留めに行ったように見えました(実際そうでしょう)。

で、今回も最初の1ラウンドのロドリゲスの攻勢を見て、「こりゃ行ける」と見切ったのではないかと。
実際、1ラウンド後には「負けることはないだろう」と思っていたようで(そうコメントしてましたね)……

 

(階級に関係なく)12ラウンドの世界戦なら、最初の3~4ラウンドで様子を見て試合中盤からギアを上げていって、後半に勝負というのが定石だと思っていましたが、その全てを2ラウンド以内にやってしまうというのが驚異です。
しかもスピードが速く、相手を捕らえるのが容易ではない軽量級で…

 

相手を見切る早さは、井上選手本人が冷静なことも当然あるでしょうけど、相手の研究を徹底的に行っている部分もあるんじゃないかと思います。
相手の過去の試合をつぶさに見て、「試合序盤はこんな感じ」「畳みかけてきたらこんな感じ」「一番いい時はこんな感じ」という具合に、動きの特徴を掴むだけでなく、どのぐらい脅威なのかというのも想定しているんじゃないかと。
それで、試合序盤に想定通りだと分かれば攻勢に転じるんだろうなぁと。
この辺は選手本人だけでなくトレーナーと共同で練っているのでしょうけど、抜群に優れていると思います。

当然のことながら対戦相手の陣営も、井上選手の過去の試合などで研究を重ね、攻略法や対策を練り、コンディションも万全に整えたうえで試合に臨んでいるはずなのに、井上選手はその上を行っているわけです。
もう「凄い」としか言いようがないです…

 

パッキャオとの比較はまだ早いけれど、可能性と期待は最大級

アジア人で、かつ、KOを量産していることから、井上選手とマニー・パッキャオを比較するような記事も見かけますが、まだパッキャオと比較するのは早いんじゃないかと思います。

パッキャオは、フライ級からスーパーウェルター級まで10階級のうち6階級で世界チャンピオンになり、しかもその全階級で圧勝しまくりという、とんでもない(という言葉だけで表現できない)ボクサー。
井上選手の破壊力も驚異的ですけど、これから階級を上げるにつれて「階級のカベ」にぶつかる可能性は十分にあります。

でも、それでも4階級、5階級と制覇する可能性は十分にあるとも思います。
バンタム級で破壊力のすさまじさは実証済みなので、スーパーバンタムに上げても今のように戦えるでしょうし、その上のフェザー級も行けるんじゃないかと思っています。
そこから先は分からないです。

 

ただ、やっぱり期待したいです。
5階級プラスアルファを。

可能性をすごく感じます。

 

 

書いた人

ダイ
スポーツをするのも見るのも好きなマルチスポーツプレイングマニア。
見る方では、海外サッカー、マラソン、トライアスロン、格闘技全般、NBA、ラグビーが主な守備範囲。サブ3.5を目指す現役サブ4ランナー。東京マラソンは12年連続ハズレで出走経験なし…。
BlackBerryとOAKLEYサングラスを愛用。
公認会計士 税理士
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