監査を受ける側にも見てほしい。「会長通牒」を読んで

日本公認会計士協会の「会長通牒」という、いわゆるお達しが公表されていたので読みました。

独立してから法定監査にはほとんど関与していないものの、昨今の不正事件を受けてのものなので。

会計士なら、みんな目を通すでしょうし(^^)

A4で2枚だけと量的にはコンパクトなものの、大事なポイントがしっかり書かれている印象でした。

ただ、これまでに監査基準や実務指針等で規定してきた内容の確認が多いので、全体的に「分かってるよな、会計士諸君!」という感じに見えました。

注目したところ

個人的に注目したところは以下の箇所でした。

1.リスク・アプローチに基づく監査について

リスク評価に当たっては、経営者の誠実性に関する監査人の過去の経験や、被監査会社又は経営者の社会的名声による予断にとらわれることなく、内部統制を含む企業及び企業環境・ビジネスを適切に理解する必要がある。

「安易にリスク評価するんじゃないよ」ということでしょう。特に「リスクは低い」と評価するなら慎重にね、ということかと。クライアントの経営者が高名な方だからといって「社長がアノ人だから大丈夫だ」なんて思っちゃいけないよ、と。

2.職業的専門家としての懐疑心

・財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示が生じるリスクは全ての企業に常に存在するという前提でリスク評価を行う。また、重要な虚偽表示リスクは常時変化する可能性があるため、監査過程を通じてリスクを見直す。

・内部統制の評価に当たっては、重要な虚偽表示リスクとの関連を常に意識し、統制目的が有効に達成されているか否かを確かめる。そのためには、表面的な承認の有無の確認に終始することなく、運用評価手続の目的を十分理解した上で手続を実施する。特に、形式的な評価に陥りがちな全社的な内部統制の評価は、実効性のある手続となっているかを確認する。

・リスクに対応した実証手続を実施する際には、被監査会社の説明を鵜呑みにすることなく、説明の裏付けとなる適切な監査証拠を入手する。

「不正や誤謬(ごびゅう)の「リスクがない」なんてことはないっていう前提で臨みなさいね」

「内部統制は形式的(表面的)な手続だけ見て評価しちゃダメよ。ちゃんと不正や誤謬を予防・発見できるのかという観点で評価するんだよ」

「クライアントからの説明をそのまんま無条件に信用しないで、信用できるだけの証拠も入手するんだよ」

ということかと。

書いてあることは一見当たり前のようですけれど、現場ではとてもセンシティブ(≒ビミョー)な時もあります。

クライアントの担当者から説明をしていただいても、それだけを鵜呑みにせず「本当に?」とさらに根拠や証拠も求めるわけで、説明する側からすれば「おいおい、俺の言うことを信じないのかよ」と構えてしまう場面も時にはあります(若かりしぺーぺーの頃経験あり)

監査する側が相手にきちんと説明して、求めている根拠や情報を上手く引き出す必要があるのは当然ですが、監査を受ける側の理解もないと難しい時もあります。

3. 経営者による内部統制を無効化するリスク

経営者による内部統制を無効化するリスク(以下「内部統制無効化リスク」という。)は、全ての企業に存在する。監査人は、経営者は誠実であるとの思い込みにより、内部統制無効化リスクは低いと判断することなく、職業的懐疑心をもって批判的に評価する必要がある。

経営者が利益操作の指示なり示唆なりをすれば内部統制は簡単にぶち壊されるので(なぜなら内部統制は経営者が構築するものだから)大事です。

世の中の経営者のほとんどの方が誠実だと思っていますが(「思い込み」ではなく本当に)、不正が起こっている以上、監査する立場ではそう考えてはいけないということです。

4.会計上の見積りの監査

会計上の見積りの監査に当たっては、経営者が会計上の見積りを行った方法とその基礎データの検討において、被監査会社の説明を鵜呑みにすることなく、収集した情報や監査チーム内に蓄積された知識に照らして批判的に検討する姿勢を保持する必要がある。

また、見積りの裏付けとなる適切な監査証拠を入手し妥当性を検討するとともに、各見積項目について、過年度の見積りと確定値又は当年度の再見積額の比較を遡及して検証する必要がある。

これも例の件絡みでの強調かと。これまでの実務指針等にも書いていることなので、よーく検証するんだよということかと。

まとめ

書かれていること自体は目新しいものはなく、既に規定されている基準や指針の確認がほとんどです。なので、「えっ!?こんなこともしなくちゃいけなくなるの!?」という現場でのサプライズはないでしょう。

その代わり、今後はこの通牒に書かれていることを特に念頭に置いて監査しないといけないわけで、監査する側は一層気を引き締める必要があるのは言うまでもないかな、と。

ただ、これによって会計不正が【完全に】防げるかというと、それは難しいだろうなぁとも思います。監査によってできることは、権限的にもリソース的にも時間的にも限界があるので。でも、牽制機能の強化による予防の効果は期待しています。

同時に、監査を受ける側にも「監査人がこれまで以上に慎重に監査するよ」というメッセージにもなると思うので、会計士だけでなく監査を受ける側の人にも知ってほしい内容だなぁと思いました。

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ダイ

ダイ

1975年1月生まれ。スポーツを見るのもやるのも大好きな41歳。サッカーではGKからFWまで全ポジションに対応(もちろんアマチュアレベルで(笑))。ボクシングではディフェンス重視のアウトボクサー。フルマラソンはサブ4。東京マラソン10年連続ハズレ中…BlackBerryとOAKLEYサングラスを愛用。 公認会計士 税理士

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