73億円と21億円。ダメージの大きさは「73億円<21億円」

73億円と21億円。

例の「不適切会計」を「やった会社」と「監査した法人」に課された課徴金です。

金額そのものは「やった会社>監査した法人」であり当然だと思いますが、ダメージの大きさで言えば「やった会社<監査した法人」のように感じています。

「やった会社」の方は、年間売上高は6兆円超(連結ベースで直近2年連続)、営業利益も直近5年間の最低でも900億円は超える巨大企業です。

一方、「監査した法人」は年間売上高は1000億円弱(直近2年で)、営業利益は直近2年で2億円前後です。利益の不正総額は2000億円超らしいので、「監査した法人」の売上高2年分を上回っていることになります。

ビジネスに違いはあるけれど、インパクトの違いは一目瞭然かと。

「監査した法人」については「対象となった期間の監査報酬」がそのままベースとなっているのに対し、「やった会社」については「その時の時価総額の10万分の6」とか「その期間に発行した有価証券発行額の100の2.25」であり(※平易な表現にしています)規定も課徴金のベースも違うのでどうしようもない部分はあるけれど、インパクトを考えると個人的には「う~ん…」と思うところもあります。

別に「監査した法人」を擁護しようというつもりはありません。金融庁が初めて課徴金を課したというのは、フォローしようがない部分があったと思うからです。

本当にしっかり監査をしていた、監査手続そのものには落ち度はなく、「やった会社」の手口がものすごく巧妙だった、ということであれば「お咎め」はなかったはずです。にもかかわらずこの処分なので、やっぱり相当落ち度があったのかなぁと。最も重い処分ではないので、最もやってはいけないこと(=共謀)まではしていなかったのでしょうけど。

最も重い処分は、法人に対する業務停止処分です。(停止期間に関係なく)これを受けると、全ての監査クライアントとの契約解除を余儀なくされ(監査報告書に記載される「平成○○年○月1日から平成XX年X月31日までの………について監査を行った」という前提が成立しなくなる)、経営が成り立たなくなるからです。

今回の「課徴金+新規業務停止」は、過去の事例としては業務停止処分の次に重い処分と言えそうです。課徴金は初めてだし(インパクトは前述のとおり)、新規業務停止は「その期間は新しい業務の契約をしちゃいけませんよ」ということで、業務の減少はあっても増加はないことになるからです。

一方で、停止期間が年明けの1月から3か月間なのは、少しだけ救われている部分もあるかもしれません。

日本の大企業に多い3月決算会社が監査法人の交代を決めるのは、やっぱり4月以降が多いんじゃないかなぁと。監査法人側と見解の相違だったり、喧々諤々のトラブルが発生しやすいのは、期末監査のある4月以降じゃないかと思うからです。それ以前に火種がくすぶっていたとしても、会社側で「もうダメ!代える!」と最終決断するのは4月~5月あたりではないかと。社内の決裁手続等もあるし(あくまで個人的な推測)

監査以外の業務案件(財務DDやアドバイザリー等々)も、期末監査が一段落した後に発生するケースが多いかなぁと(あくまで個人的な推測)

4月以降であれば新規業務を受けることも可能になるので、「とてつもなく大きな」ダメージとまではいかないかもしれません(これだけ大々的に報道されればそれだけでダメージは小さくないでしょうけど)

今回の一連のことで「監査法人ダメじゃん」という意見も多いけれど、巨額の不正をする大企業がある以上はやっぱり監査は必要だと思っています。

監査する側が巨額の不正を見逃さないようにするのはもちろん大事ですけど、企業経営者にもマトモな倫理観というか「不正はダメ、ぜったい」というスタンスは必須だと思います。

「だ~れも不正なんかしないんだから、監査なんてゴリゴリする必要ないじゃん」という状況が理想的なのでしょうけど、それは無理なんだろうなぁと改めて思います。

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ダイ

ダイ

1975年1月生まれ。スポーツを見るのもやるのも大好きな41歳。サッカーではGKからFWまで全ポジションに対応(もちろんアマチュアレベルで(笑))。ボクシングではディフェンス重視のアウトボクサー。フルマラソンはサブ4。東京マラソン10年連続ハズレ中…BlackBerryとOAKLEYサングラスを愛用。 公認会計士 税理士

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