クラブチームによるサッカー選手の資産計上

先日、サッカークラブの人件費(選手年俸)負担の重さについて書きました。

バルサのお金の問題はたしかに深刻かもしれない
今朝こんな記事が気になってしまいました(^^;) 一般企業ならアウト!? メッシらを抱えるバルサの人件費が想像を絶する額だった! (以......

その時に各クラブのアニュアルレポートを見ていて気付いたのですが、クラブチームはサッカー選手を【条件つきで】資産計上できるようです。

B/S上の勘定科目に出ている

クラブチームの貸借対照表(Balance Sheet。以下、B/S)の資産科目の中に「Players’ registrations」という名の科目が無形固定資産として計上されています(この科目名はマンチェスター・ユナイテッドのForm 20-Fより)。科目名はクラブによってまちまちかもしれませんが、どのクラブも大なり小なり無形固定資産にこの種の科目が計上されています。

これが「サッカー選手の資産計上」に相当するものです。

科目の内容は、選手の移籍金のようです。

以前にも書きましたが、「移籍金」は移籍元のクラブチームに支払う解約違約金です。選手に代わり、獲得するクラブが支払っているものです。

「年俸」と「移籍金」の違い
こないだのつづきで、「年俸」と「移籍金」の違いについて、です。 「移籍金○○億円」という金額をニュース記事で見ると 「え......

この支払金額に関しては一括費用処理するのではなく、獲得した選手との契約期間にわたって費用処理していくのが適正だろう、ということなのでしょう。

本当にありそうな(笑)会計処理例

例えば、ユベントスがGKブッフォンの後釜としてジャンルイジ・ドンナルンマをミランから獲得。ミランに支払う移籍金は180億円、契約期間が10年だったとします。

(将来本当にありそうだけど(笑)、あくまでも一例)

その場合ユベントスは、ミランに支払った移籍金180億円は獲得した期の費用として全額処理するのではなく、10年間にわたって均等償却していこう、ということのようなのです。

そのため、移籍金はユベントスのB/S上で無形固定資産として資産計上し、ドンナルンマとの契約期間10年間にわたって毎期18億円ずつ費用処理していくことになります(おそらく月割で)。

当然ですが、費用処理(償却)期間は「イコール契約期間」なので、選手によってバラバラです。一律に「○年間」というのはありません。

「選手なんだから有形固定資産じゃないの?」という疑問もあるかもしれませんが、この場合の資産は「選手そのもの」ではなく、「(契約に基づく)選手の保有権」という権利なので「無形」固定資産となります。

ちなみに、選手に支払う「年俸」の方は、支払った期に即時費用処理されます。

こういう処理もある

選手との契約に基づく無形固定資産とはいえ、契約期間中に他所のクラブに売却(放出)することもありえます。

そういう場合には、その選手にかかる「Players’ registrations」のB/S残高と売却に伴い入ってくる移籍金額の差額を売却損益として処理することになります。固定資産の売却処理とほぼ同じ処理方法でしょう。

また、ケガや不振等で選手の価値が毀損することもありえます。そのような場合には、これまた固定資産と同様に減損処理が必要となります。

そのため、判定基準は選手のポジションや特徴によって様々でしょうけど(これを一律に決めるのは難しい…)、毎年「Players’ registrations」が計上されている各選手について減損テスト(減損の要否の判定)を行う必要があります(減損テストをしている旨の注記も見られます)

資産計上には条件がある

冒頭で【条件付きで】と書きました。これは、他クラブからの獲得選手でないと資産計上できないということです。

「Players’ registrations」は、選手の移籍元のクラブに支払った移籍金に基づいて計上するので、よそのクラブから獲得した選手であることが前提となります。

よって、ユース世代からクラブが育成してきた選手については、この科目に計上されません。自己創設のれんの計上が認められない「のれん(Goodwill)」に似たような取扱いといえます。

なので、例えばバルサなら、リオネル・メッシやアンドレス・イニエスタ、ジェラール・ピケといったカンテラからの生え抜き選手の分は計上されないことになります。

また、獲得当初の契約期間いっぱいになれば、その選手にかかる「Players’ registrations」残高はゼロになります。よって、そのまま契約更新となった場合はゼロのままとなります。

例えば、バルサの直近の「Players’ registrations」に相当する無形固定資産は223百万ユーロのようですが(ソースはこちらの178/185ページ)、内訳はラキティッチ、テア・シュテーゲン、ブラーボ、J・アルバ、スアレス、ネイマール等々なのでしょう。

(マスチェラーノやD・アウベスは既に更新しているはずなので、もう「Players’ registrations」の残高はゼロではないかと)

今のメッシなら、一人だけでこの金額を超えちゃいそうですね(苦笑)

終わりに

たまには会計的なことも書かないとなぁと思っていたら、ドンピシャのネタがありました(笑)

こうやって見てみると、クラブ毎に特徴も出るんじゃないかなぁと思います。育成上手なクラブなら「Players’ registrations」は少なめの金額になり、バンバン買いまくるチームなら多額になる、という感じで。

こういう見方もなかなか興味深いです。

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ダイ

ダイ

1975年1月生まれ。スポーツを見るのもやるのも大好きな41歳。サッカーではGKからFWまで全ポジションに対応(もちろんアマチュアレベルで(笑))。ボクシングではディフェンス重視のアウトボクサー。フルマラソンはサブ4。東京マラソン10年連続ハズレ中…BlackBerryとOAKLEYサングラスを愛用。 公認会計士 税理士