今のドイツサッカーに「ゲルマン魂」はないと思っている

以前、私の中で「ゲルマン魂は死語だ」と書きました(こちらです)。

今ではサッカーで「ドイツ」というだけで「ゲルマン魂」を連想する方が多いのですが(スポーツ記者で安易に用いる人が多いのはとても残念…)、本来的な意味から考えると、今のドイツサッカーにはないと思っています。

「ゲルマン魂」の由来

この「ゲルマン魂」という言葉が使われるようになったのは、60~70年代の日本サッカー界に多大な功績をもたらしてくれたドイツ人サッカー指導者のデットマール・クラマーさんの以下の言葉からです。

「ドイツにはゲルマン魂がある。君たち日本人にも素晴らしい大和魂があるじゃないか」

強靭な精神力、折れない心という意味でクラマーさんは使われたのだと私は思っています。

かつて見られた「ゲルマン魂」

実際に、私がサッカーを見始めた頃(1980年代)の西ドイツ代表は、その意味での「ゲルマン魂」を随所に見せていました。

例えば、82年W杯スペイン大会準決勝のフランス戦。延長戦でフランスにたてつづけに2ゴールを奪われて負け確定かと思われていたのに2点を奪い返してPK戦で勝ちました(GKシューマッハーのバチストンに対するボディアタックが論議を呼びましたが…)。

86年W杯メキシコ大会決勝のアルゼンチン戦でも、後半立ち上がりまでに2点を奪われてこのまま終わるかと思っていたら、K・H・ルムメニゲとルディ・フェラーのゴールで同点に追いつきました(その後、ホルヘ・ブルチャガに勝ち越しゴールを奪われて惜しくも負けましたが)。

86年メキシコ大会は特にすごかったです。グループリーグ初戦のウルグアイ戦で、ローター・マテウスのミスからアントニオ・アルサメンディに先制されながら、その後雨あられの猛攻で後半終了直前にクラウス・アロフスが同点ゴールを決めてドロー。スコットランド戦でもゴードン・ストラカンに先制されてから火が点いて、最終的に逆転勝利。準々決勝のメキシコ戦は、地元メキシコに再三にわたって攻め込まれましたが、耐え抜いてPK戦まで持ち込んで勝利しました。

そういえば当時の西ドイツには、今は監督として有名なフェリックス・マガトもいましたね(笑)。

88年EURO西ドイツ大会初戦のイタリア戦でも、ロベルト・マンチーニに先制されて敗色濃厚だったところでアンドレアス・ブレーメがFKで同点ゴールを決めてドローに持ち込みました(FKのきっかけになったイタリアGKゼンガの5ステップについては「ホームタウン・ディシジョンか?」とか論議がありましたが…)。

……書いていて、今のクラブチームの会長や監督になっている人が続出していて懐かしく感じます(^^)

先制されても必ず追いつく。絶対にあきらめない、心は先に折れない。
そんな強い精神力こそが「ゲルマン魂」だったと私は理解しています。

「ゲルマン魂」の退化

そんな「ゲルマン魂」が、90年W杯イタリア大会では影を潜めることになります。西ドイツが先制されたり形成不利になることがなくなったからです。優れた若手選手(クリンスマン、コーラー、イルクナー、ヘスラー、メラー等)の台頭と「3-5-2」のフォーメーションの成功が相まって、常に優位に試合を進められるようになったからです。

この意味では、「ゲルマン魂」のポジティブな退化があったと見てよいのでしょう。

ただ、その「ポジティブな退化」はその後、結果的に仇になったように思います…。
それ以降、先制されても追い付く、心が折れないような試合が見られなくなったのです。

92年EUROスウェーデン大会決勝では、デンマークに2点を奪われて一矢も報いることなく敗戦。94年W杯アメリカ大会でもブルガリアに逆転負けと、脆さを感じさせるようになったのです。

98年W杯フランス大会から12年EUROまで、一応それなりの好成績を残しているものの、「ゲルマン魂」という言葉とは裏腹な残念な負けっぷりでした。技術・体力面では申し分なく素晴らしかったし、今も変わらず素晴らしいのですが、精神的な強さは「どうなんだろう?」という疑問符が常にあります。

具体例を出すと、98年W杯フランス大会の準々決勝クロアチア戦(0‐3で負け)、00年EUROベルギー・オランダ大会グループリーグポルトガル戦(0‐3で負け)、12年EUROポーランド・ウクライナ大会準決勝イタリア戦(1‐2で負け)。

それと、地元ドイツで開催された06年W杯準決勝のイタリア戦。あの時のドイツに「ゲルマン魂」があったかというと、どうだろう?と思います。明らかに優勝を狙っていた大会だったにもかかわらず、です。

格下の相手に確実に勝つという良いところがある反面、互角以上の実力がある相手には先に心が折れがちなのが今のドイツのような感じがしています。

まとめ

私なりに振り返ると、改めて80年代で「ゲルマン魂」は退化したと感じます。
きっかけは90年の「ポジティブな」退化で、それ以降は違った良さ(合理性とフィジカルの優位性)を発揮しているのがドイツサッカーかなと見ています。

今年W杯で優勝したのは、その新しいドイツの良さを最大限に発揮したことが要因なのであって、そこに「ゲルマン魂」はなかった(あったとしても、ごく僅かだった)と思っています。

個人的には、80年代の泥臭い西ドイツは好きでしたので、あの頃の試合をたまに見たいなあと思うことがあります。

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ダイ

ダイ

1975年1月生まれ。スポーツを見るのもやるのも大好きな41歳。サッカーではGKからFWまで全ポジションに対応(もちろんアマチュアレベルで(笑))。ボクシングではディフェンス重視のアウトボクサー。フルマラソンはサブ4。東京マラソン10年連続ハズレ中…BlackBerryとOAKLEYサングラスを愛用。 公認会計士 税理士

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